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『スタンレーの魔女』感想

観劇してきました


(原作未履修者の感想なので「ふぅ~ん」くらいに呼んで頂けますと大変助かります…)
以下作品内容触れておりますのでお気をつけください。
全体のふわっとした感想です…!

















松本零士作、スタンレーの魔女。
時は1940年代太平洋戦時下の海軍爆撃隊に所属する男達の物語。
そして戦争の時代に死んでいった男達の物語………ではなかった。


今回の作品、登場する彼らは時代に翻弄されて命を奪われた訳では無かったんだと思う。彼らはみんなその時代に生きて、生きて、ただひたすらに自分の生を全うしていた。
戦争は何もかもを奪っていくけれど、彼らの心は多分、奪われてなんかいなかったんだと思う。
でもね、孤独だから死んでしまったハーロックと、仲間がいたから生き残れた敷居くんと、残酷なのはどちらなんだろうか。







物語一番最初、敷居くんが操縦席に座っている後ろでみんなが「じゃあな」って穏やかな笑顔で去っていく姿に、(これは死ぬ順番では…)って思って観ていたのですが当たらずも遠からずといった感じでしょうか…。
足立が最後から2,3番目?だったことしか覚えてない私の落ちこぼれ頭め!次観る日は石田中尉と後藤の順番ちゃんと確認するんだぞ!


その冒頭のシーンがとても印象的で、終盤みんなが機体の重量を下げるためにどんどん装備を落としていく時に(飛び降りないで…飛び降りないで…)って願ってましたがそれは叶わずでした。




最後、敷居くんが目を覚ましたら周りに誰もいなくて、みんなが飛び降りたことに気付かされるシーンは、飛び降りる描写がない故にとても呆気なくみんなの死が描かれていたと思います。(ここの暗転でその後の展開を想像してしまって、過呼吸起こすんじゃないかってくらい息が上がってしまって苦しかった…)


もし彼らが機体から身を投げる場面が舞台上で展開されていたら、あんなに笑顔に溢れた日常を過ごしていた彼らの死を突きつけられる、とてつもなく辛い物語になっていたのだと思います。
いや実際辛いんですけど…!
でもリアルな死の描写は多分、あの作品には必要のない要素だったのでしょうね。だから描かれなかったし、描かれなかったからこそ最初の場面がフラッシュバックしてつらかった。

みんなはずっと、空を飛んで、山を超えて、戦って…そんな夢を追いかけていた。そこには絶望も苦しみもなくて、ただ彼らの心に灯る炎が明るく照らしていた。
だから、死を描いて彼らの日々を悲しみで塗り潰す物語にすることはなかったのかなって。



彼らのロマンが「お国のために」ではなく「空を飛びたい」だったことがまたとても…アツいというか。そっかぁ、って。そうだよねって。飛びたいよね、もしかしたら彼らの中には飛びたくて志願した人もいるかもしれないよね。あの時代その方法しか無かったもんねって。これは私の勝手な妄想ですけど。
明言されていないだけで彼らの心の中にあったとは思います、お国のためにという気持ちは。でもやっぱり「飛びたい」が強かったんだろうなぁって私は感じた…(感想を書く時に必要なのは、私はこう感じた!を忘れないことだっておばあちゃんが言ってたもん嘘じゃないもん))

とは言っても、足立が最後ずっと右腕の日の丸を握りしめていたのはグッときました。足立~~も~~!!!!!!!!足立の後藤を呼ぶ叫び声がつらくてつらくて。







最初のみんなの、「それじゃあな」「おう」って軽くて穏やかな雰囲気からして敷居くんが気付かない内にみんな静かに飛び降りて行ったのかな…機体がガタガタ傾いて操縦不能にもなったかもしれない。そんな危機迫った状態でひとり、またひとりって敷居くんに夢を託していったのかな。

観てる間私は地上にいるミナコちゃんたちの気持ちになってました。一瞬。みんなが爆撃機に乗り込むための装備を身につけている時。
あなたがそこにロマンを抱いていることを知っているから行かないでなんて言えないけど、死なないで。どうか生きて帰ってきてほしい。無事でいて。みたいな…2次元追ってても夢女にならないけど舞台みると突然こうなるの不思議。っていうのは置いておいて。





前半のゆったーりとした日常を描く笑いのシーンは、

「演劇を作る上での究極の理想は、遊んでいるうちに出来上がってしまうこと」という御笠ノ。俳優たちは、演じる人物をどう存在させるか、様々な角度からアプローチしていく。

というエンタステージさんの記事で読んでいた御笠ノさん流のやり方を感じました。
役者さん方が自由に役を動かす中で生まれるやり取りに委ねているからこそ得られる空気感なのかなぁって。そういうのって横の繋がりや信頼関係があってこそだと思うので、故に【劇団っぽい】と末満さんも感想を述べられていたのでしょうか。

初日ってどうしても空気が固くなると思うんですけど、思いっきり笑えてとっても楽しかったです。明日以降日替わりネタみたいなものがあるのか、楽しみです~








生と死だけでない戦争モノってどんなのだろう。
その時代を生きた若者の生き様ってどんなのだろう。

と、観る前ずっと考えていて。葛藤とかそういうのかな。泣いてしまうな…と思っていたのですが想像とは全然違いました。

戦争モノなのに“死”が全然近くなかったことに驚きました。死というより、死への恐怖、かな。
自分が死ぬことへの暗い感情が全然漂っていなくて、彼らは最初から最後まで、心やその瞳に自分のロマンや夢の炎を燃やしてひたっすらに生きていたのが強く感じられて。

飛びたい、
山を超えたい、
飛びたい、
飛びたい飛びたい飛びたい!!!
ってギラギラと目を輝かせる彼らはまるで少年のようで。


時代が違えば、という中尉の台詞は苦しかったです。
今の時代なら、令和の今なら、彼らは死なずに済んだかもしれない。でも人は生まれる時代を選べない。
彼らは自分たちが生まれた時代に、自分の夢やロマンを乗せて、生きていたんだなぁって。
戦争モノの新しい形を知ることが出来た気がします。



最後カーテンコールでばっと出てくるみなさんの顔が、自分はこの時代を確かに生きていたんだっていう誇りに満ちていて悔いなんてなくて、そこで更に涙が止まらなかったです。
カーテンコール一回目はまだキャラクターのヴェールを脱ぎ切っていないと思うので余計にそう感じただけかもしれないのですが…!





まだ観劇予定が何度かあるのが本当に楽しみです。
彼らは事実として死んでしまったしそれが辛くて泣きもしましたが、不思議と清々しさの残る観劇後でもあります。
けれども敷居くんの最後のシャウトはやっぱりつらい。みんなが居なきゃ意味が無い。
みんなは敷居くんに夢を託したけど、それはとても残酷なことだなぁって思ってしまった…。


以上、初日の簡単な感想でした。
次観たら各キャラクターに思いを馳せて感想書きたいな!